空蝉
率先して無茶をする翔。

それを咎めることすらせず、一緒になって笑っているヨシキ。


当然、ふたりは教師たちから煙たがられていた存在だった。



「お前ら、馬鹿じゃねぇの? 遊ぶならもっと上手くやれよ」


どうしてそう声を掛けたのかは、今となっては自分でもよくわからないけれど。

とにかくカイジのその一言をきっかけに、仲よくなったのだ。


3人でいれば無敵だと、あの頃は信じて疑わなかった。


3人でなら何でもできる。

困ったことがあったら俺がどうにかしてやるから、と。





真理が死ななければよかったのだろうか。

そしたらずっとあの頃のままでいられたのだろうか。


真理ちゃんさえ死ななければ、俺はちひろと――。





「って、俺は結局、エミの言う通り、全部を真理ちゃんが死んだことの所為にしてるだけなんだよなぁ」


乾いた笑いが口から漏れた。



泣きたかったのに、泣けなくて。

だから余計、苦しくて。


でももう、カイジの代わりに泣いてくれる人はいない。



「ふ、ははは……」


笑っているはずなのに、顔がいびつになっていくのがわかる。

寂しくて、虚しくて、そして悲しくて。


そこでふと、今ここで俺が死んだらどうなるだろうかと、思ってまた歩道橋の下を覗いた時だった。
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