空蝉
1
目を覚ました時には昼を過ぎた頃だった。
充はあくびを噛み殺し、起き抜けの一服とばかりに煙草を咥える。
ぼうっと煙を吐き出しながら、真っ白い天井を見上げた。
3階建ての実家の、3階部分は、今や、ほぼ充しか使わない。
そこらのマンションのワンルームよりも広い自室で、充はそのほとんどの時を過ごしている。
煙草を消してもうひと眠りしようかと思った時、コンコン、と、ドアをノックする音が。
返事も返していないのに、ドアを開けた翔。
翔はコンビニ袋を手に、「うぃーす」などと笑いながら、充の座るベッドへと近付いてきた。
起きて早々、うるさいのが来たなと、充は思わず舌打ちしそうになった。
「何の用だよ、お前」
「酒、一緒に飲まねぇかなぁ、みたいな」
翔は「ほら」と、持っていたコンビニ袋を差し出してきた。
中にはたくさんのビールの缶が。
「俺、今起きたばっかだぞ」
「知るかよ。早く起きねぇ方が悪ぃんだろ」
そういう問題じゃねぇだろ。
つーか、一応、まだ昼だぞ。
色々と言いたいことはあったが、わざわざ言葉にするのが面倒なので、やめておく。
翔はローテーブルに缶とつまみを並べ始めた。
どうやら本当に飲み会が始まってしまうらしい。
俺、朝方まで飲んでて、多分今も二日酔いの状態なんだけど。
でも、やっぱり面倒だから、言わないでおいた。
ベッドを降り、翔に促されるままに缶ビールのプルタブを開ける。
何に対してなのかはわからないが、とりあえずふたりで適当に乾杯した。