空蝉
翔と部屋でうだうだやっているうちに、夕方になった。
特に何か話すわけではない。
だからって、別に、仲が悪いとかでもない。
変な関係だなと思う。
その時、再びコンコンと、ドアをノックする音が聞こえた。
またしても、充が返事を返さないうちからドアが開けられる。
エミだった。
翔はその瞬間、「げっ」と蛙が潰されたような声を出したが、エミはそんな翔を一瞥しただけで、気にもせず、
「寝てると思ってたのに」
「二度寝しようと思ったら、この馬鹿が来やがったから」
翔はあからさまに不貞腐れた顔になったが、充も気にしないでおく。
「お前、これから仕事じゃないのか?」
「今日は休みでしょ」
「そうか」
言われて初めて、そういえば、と思った。
日がな一日中、部屋で引きこもりのように過ごしている充には、曜日の感覚が薄い。
エミは「寝惚けてんの?」と呆れ顔。
しかし、無視されっぱなしだったからか、翔は相変わらず不貞腐れた顔のままで。
「俺、帰るわ」
言うなり、さっさと部屋を出て行ってしまった。
悪いことをしたかなとは思った。
けれど、正直、ほっとした気持ちになったのも事実だった。