空蝉
あの日、充はいつの間にか眠ってしまっていた。
起きた時にはエミはもうそこにはいなかった。
それから一週間。
一週間、ずっとエミと連絡が取れない状態が続いている。
元々、頻繁に連絡を取り合うような間柄ではなかったとはいえ、着信を残しているのに返されないことはありえない。
やはり、あの日、何かあったのだろう。
エミのマンションにも行ってみたが、帰ってきている様子はない。
仕事も休んでいるみたいだし。
カイジに電話したのだが、「忙しくてそれどころじゃねぇ」と、一方的に切られてしまった。
ヨシキは二週間前から撮影で海外らしいし。
いよいよ探す当てがなくなり、充は日増しに焦りと不安が募っていった。
そして、あれから10日が経った、ある日のこと。
携帯が鳴り、着信画面にエミの名前を見た充は、慌てて通話ボタンを押した。
「お前、ずっと何やってたんだよ。何回も電話しただろ。心配させんなよ。今、どこにいる?」
早口に言った充に、エミは電話口で少し沈黙した後、
「別れたいの」
ぽつりと言われた言葉に、充は我が耳を疑った。
聞き間違いだと思いたかった。
「何言ってんだよ、いきなり」
「別れたいの」
今度ははっきりと、もう一度言ったエミ。