十八歳の花嫁
警察側としては、ここは賭けだろう。
児童買春と売春防止法では刑罰の程度が雲泥の差だ。
直後、美馬は小さなソファに窮屈そうに座ったまま薄く笑った。
そして彼は、警官らが驚くような台詞を口にしたのである。
「西園寺愛実、都立K高等学校三年、誕生日は平成○年四月十一日……今日で十八だ。住所は、東京都中野区……」
その場にいた全員が絶句した。
もちろん愛実も呆然としている。初めて会ったはずの男に名前や住所、生年月日まで知られているなど、普通では考えられない。
「な、何をそんな……でたらめを言って誤魔化せると」
「誤魔化す必要はない。彼女は私の婚約者だ。知っていて当然だろう」
美馬はスッと立ち上がると、驚く警官たちの前を横切り、愛実の横に立った。
「そうだったな、愛実。私たちの婚約の証を見せてやるといい」
その指には、十八歳の少女に不似合いな大粒のダイヤモンドが燦燦と輝いている。
美馬は愛実の肩に手をやると、ごく自然な動作で抱き寄せた。
「私は東部デパートの社長、美馬藤臣だ。二日も約束をキャンセルし、今夜も随分待たせてしまった。早くふたりきりになりたくて、場末のラブホテルに飛び込んでしまったが……。それがいったいなんの犯罪になるんだ? 納得のいく説明を得られぬときは、どうなるか覚悟するんだな」
多数の人間が息を呑み……。
ラブホテルの一室は、普段とは違う種類の熱い空気に包まれた。