十八歳の花嫁
和威は、すぐ下の個室からかけている。
一階のカフェレストランまで下りて来て欲しい。
――そう言うと、愛実の返事を聞かず電話は切れた。
瀬崎以外は知らないと言っていた。
どうして和威がこのホテルまで来たのか、愛実にはわけがわからない。
それに、和威の声はどこか怒ったような様子で、彼女の胸をざわめかせる。
愛実は迷いながらも藤臣に連絡を取ろうとするが……。
彼の携帯電話に出たのは、女性だった。
『あの……美馬、藤臣さんをお願いできますか?』
携帯電話の場合、普通は本人が出るものだと思っていた。
ただ、こういった経験のない愛実には、今ひとつ自信がない。
『……どちら様でしょう?』
電話の向こうの女性は明らかに不機嫌そうな声を出す。
『あ、すみません。えっと、西園寺愛実と言います。美馬さんに用があって……』
愛実は誰もいない空間に頭を下げながら、低姿勢で話しかけた。
『彼は……今は出られないわ。忙しいの――わかるでしょう?』
『はい。そうですね。どうもすみませんでした。あの、電話があったことだけ』
それだけでも伝えておいてもらおうと付け足すが、その前にプツリと切れた。
携帯電話を抱え、途方に暮れる愛実だった。