十八歳の花嫁
☆ ☆ ☆
満を持して復讐劇はスタートした。
愛実の了解で、弥生は墓穴を掘ったも同然だ。
美馬一志は息子欲しさに、二回りも年下の祇園の芸妓を愛人にした。
だが藤臣が産まれた直後、婿養子の一志は弥生に逆らいきれず、認知もせずに愛人と息子を捨てたのだ。
弥生は、夫の子供を産んだ藤臣の母を執拗に攻撃した。
母は祇園にもいられなくなり、水商売を転々とした挙げ句……。
日陰の身を承知で愛人となった母にも責任はあるだろう。
だが、半分の年齢の女に子供を産ませ、父親の責任を果たすどころか、住む場所も仕事すら奪った連中である。
どんな正当な理由があったとしても、子供は間違いなく犠牲者だ。
母親が死んだときも引き取ろうとはせず……。施設で過ごした六年間は、傷ついた少年をさらに追い詰め、彼の心を見事なまでに打ち砕いた。
藤臣はシャワーのコックを捻る。お湯は途切れ、ポタポタとタイルに雫が落ちた。
(もう少しで、全部奴から奪ってやれたんだ。それをさっさと死にやがって。目の前で奪い取り、会社も美馬の邸も、跡形もなくぶち壊してやるつもりだったものを――。まあいい。すべてが手に入れば、予定どおり、バラバラにして売り払ってやろう。美馬の名前すら残らないほど……。奴が死ぬまで否定した息子の手腕を、じっくり見るがいいさ。文句があるなら、いずれ地獄で顔を合わせたときに聞いてやる)
頭を振り、髪から水滴を払うと、藤臣はシャワールームから出た。