十八歳の花嫁
☆ ☆ ☆
細長い回廊のようなレストランだった。
大きな窓に沿ってテーブル席がずらりと並ぶ。窓には白いレースのカーテンがかかっている。
全席から噴水のある庭園が見え、フロア全体に春の陽射しが燦々と降り注いでいた。
レストランの入り口に立った瞬間、愛実は藤臣のことを思い出す。
二日前の夜、藤臣に連れて来てもらった。
そのときはディナーだったので外は真っ暗だ。店内の照明は食事に差し障りない程度に落とされ、テーブルの中央に置かれたキャンドルがロマンティックに揺らめいていた。
(大事な仕事中だったのかしら? 電話なんかして……子供はこれだからって思われた?)
数分待ったが折り返しの電話もなかった。
愛実は藤臣を怒らせたのではないか、と不安になる。
まさか、昨夜プロポーズを了承した男性が、他の女性と親密に過ごしているとは思いもしない。
だが、和威にはどう言えばいいのだろう。
結婚を承諾したことすら、伝えていいかわからないのだ。
藤臣を選ぶと決めた以上、彼のマイナスになることはしたくない。愛実は何も言わないことを決めて、和威に会うことにした。
今日の愛実は薄っすらと化粧をしている。
傷を隠すため、ファンデーションと淡い色の口紅を塗る程度だ。
しかし、ほんの何日か前に比べたら、愛実の印象はガラリと変わっていた。しかも普段着とは違う、藤臣の買い与えた上品なワンピースに着替えている。
和威は彼女の顔を見るなり、目を見開き――直後、怒りに見える感情を露わにした。
「あの……お待たせいたしました」
穏やかな印象を持つ和威から、険悪な波動が伝わる。
愛実は少し怖くなり、なるべく彼から遠くの椅子に手をかけた。