十八歳の花嫁
「やあ。驚いたよ、藤臣さんが女性とスイートに泊まっているというから……まさか、君だなんて」
和威は席を立ち、「どうぞ」と着席を薦めた。
「信一郎さんが入院していることは、藤臣さんから聞いたかな?」
愛実は椅子に腰かけ、コックリとうなずく。
「重傷らしいんだが、信一郎さんの怪我と君は何か関係してるの?」
彼女が黙っていると、和威は大きく息を吐いた。
「そうか……藤臣さんから口止めされているわけか」
何も答えられず、愛実はうつむきテーブルに置かれた水のグラスをジッとみつめる。
「君はまだ高校生だろう? 今、自分が何をしているのか、わかってるのかい?」
和威の口調は俄に愛実を責め立てた。だが、彼女には言葉の意味がわからず、
「何をって……わたしが何か?」
「彼とひとつの部屋で寝泊りしているだろう!? 君らがどういう関係か、誰だってわかる。高校生でありながら、学校を休んでまでこんな……。しかも、君に化粧なんて似合わない!」
和威は苛立たしげにコーヒーカップに手をやり、空になっていることに気づいた。
音を立ててカップを置くと、代わりに水を飲み干す。
(どうしよう……誤解して怒ってらっしゃるんだわ。でも、信一郎さんのことを言ってもいいの?)
愛実は和威の言葉に頬を染め、顔を背けた。
その仕草が一層誤解を招くとは思いもせず……。