十八歳の花嫁
藤臣の説明に由佳もやっと理解できたとばかり、大きくうなずいた。
「そういうことでしたか。でも、あんなにお若いお嬢様なら、ご結婚は数年先かしら? それまでは秘書の私が充分にサポートさせていただきます。もちろん、お嬢様のご機嫌を損ねるような真似は」
バサッと音を立て、藤臣は資料を閉じた。
そのまま小さく息を吐き、由佳に視線を向ける。
「プライベート用の携帯には出るな、と言っておいたはずだ」
「申し訳ありません。西園寺様のお名前を聞いておりませんでしたもので……」
「着信履歴を消したことは?」
由佳は口元を引き結ぶと、「単純な操作ミスです。申し訳ございません」しゃあしゃあと言い訳をする。
だが、三文芝居なら藤臣も引けは取らない。
「なるほど……。では、秘書室から新しい人間を廻してもらうことにしよう。携帯の使い方も知らない秘書は不要だ」
「私の……仕事ぶりには、充分ご満足いただけていると思っておりましたのに」
由佳の声が震えている。“満足”がベッドの上での仕事ぶりを指すのは明らかだ。
「満足?」
仮面のような藤臣の顔に表情が浮かんだ。
それは愛実に見せる笑顔とは違い、愛人を見下す男の冷笑。
「私は君に与えられた以上の対価を払ってきたつもりだ。不満なら新しいボスを見つけてくれ」