十八歳の花嫁
第11話 真理
第11話 真理
「言っておくけど、奥村さんだけじゃないよ。手を切ってないなら、藤臣さんには軽く五人以上の女性がいたと思う。信一郎さんと比べても、それほど品行方正ってわけじゃない。君が本気なら、今日のようなことは簡単に許すべきじゃない! お金のことが心配なら、結婚とは別に僕が用意する。だから、もう一度ちゃんと考えてみてくれ」
ホテルのロビーに立ち、和威は愛実の両肩を掴むと必死の形相で言った。
その勢いに押されて、愛実は二度三度とうなずいた。
愛実はひとりで部屋に戻り、奥村由佳のことを考えた。
藤臣のネクタイを結ぼうとしたとき、彼女は凄い目で愛実を睨んだ。
おそらく嫉妬だろう。女性からあれほどまでの悪意をぶつけられたのは初めての経験で、愛実はどんな態度を取っていいのかわからなかった。
(……わたしって、意地悪なのかもしれない)
藤臣が愛実の手を取った瞬間、彼女の心の中に優越感が生まれた。
これまでのことはともかく、彼は由佳より自分を選んだ。
きちんと『婚約者』と紹介してくれたのが何よりの証拠だろう。そんな嬉しさもあって、楽しそうな声を上げはしゃいでしまった。
由佳からは、さぞ、嫌われたに違いない。
和威は許すべきじゃないと言う。
だが愛実に、誰に向かって怒れと言うのだろう。
容姿も肩書きも非の打ち所のない藤臣に、お付き合いしていた女性がいないはずがない。
複数いることは問題だが、それを責める権利は実際に交際中の女性たちにある。
彼女らにとって、いきなり現れて恋人を奪ったのは愛実だ。恨まれこそすれ、恨む筋合いのものではない。
和威はふたりの関係を誤解しているだけなのだ。
藤臣が愛実に対して真摯で誠実な態度を取っていることを知れば、きっとわかってくれるに違いないが……。
藤臣が愛実を愛していないことを言うわけにはいかない。
それに、今はもうお金の問題だけではなくなった。
片思いとはいえ、恋する男性と結婚できる。もし、万にひとつ、両思いになれたなら……。そうなってはじめて、愛実は藤臣に『浮気はしないで』と言えるだろう。
ただ、藤臣と話し合う必要はあるかもしれない。
結婚後も女性たちとの関係を続けるのかどうか。それだけは確認しておかなければ、愛実にも心構えがいる。
(きっと、わたしじゃダメなのよね)
重い足で寝室に戻り、ベッドに倒れ込む愛実だった。
「言っておくけど、奥村さんだけじゃないよ。手を切ってないなら、藤臣さんには軽く五人以上の女性がいたと思う。信一郎さんと比べても、それほど品行方正ってわけじゃない。君が本気なら、今日のようなことは簡単に許すべきじゃない! お金のことが心配なら、結婚とは別に僕が用意する。だから、もう一度ちゃんと考えてみてくれ」
ホテルのロビーに立ち、和威は愛実の両肩を掴むと必死の形相で言った。
その勢いに押されて、愛実は二度三度とうなずいた。
愛実はひとりで部屋に戻り、奥村由佳のことを考えた。
藤臣のネクタイを結ぼうとしたとき、彼女は凄い目で愛実を睨んだ。
おそらく嫉妬だろう。女性からあれほどまでの悪意をぶつけられたのは初めての経験で、愛実はどんな態度を取っていいのかわからなかった。
(……わたしって、意地悪なのかもしれない)
藤臣が愛実の手を取った瞬間、彼女の心の中に優越感が生まれた。
これまでのことはともかく、彼は由佳より自分を選んだ。
きちんと『婚約者』と紹介してくれたのが何よりの証拠だろう。そんな嬉しさもあって、楽しそうな声を上げはしゃいでしまった。
由佳からは、さぞ、嫌われたに違いない。
和威は許すべきじゃないと言う。
だが愛実に、誰に向かって怒れと言うのだろう。
容姿も肩書きも非の打ち所のない藤臣に、お付き合いしていた女性がいないはずがない。
複数いることは問題だが、それを責める権利は実際に交際中の女性たちにある。
彼女らにとって、いきなり現れて恋人を奪ったのは愛実だ。恨まれこそすれ、恨む筋合いのものではない。
和威はふたりの関係を誤解しているだけなのだ。
藤臣が愛実に対して真摯で誠実な態度を取っていることを知れば、きっとわかってくれるに違いないが……。
藤臣が愛実を愛していないことを言うわけにはいかない。
それに、今はもうお金の問題だけではなくなった。
片思いとはいえ、恋する男性と結婚できる。もし、万にひとつ、両思いになれたなら……。そうなってはじめて、愛実は藤臣に『浮気はしないで』と言えるだろう。
ただ、藤臣と話し合う必要はあるかもしれない。
結婚後も女性たちとの関係を続けるのかどうか。それだけは確認しておかなければ、愛実にも心構えがいる。
(きっと、わたしじゃダメなのよね)
重い足で寝室に戻り、ベッドに倒れ込む愛実だった。