十八歳の花嫁

第2話 応酬

第2話 応酬





愛実を迎えに行く予定だった。

ところが、入院中の信一郎の仕事が回って来てしまい、専務の藤臣が本社に行く羽目になってしまったのだ。
苛立ちを覚えたが、仕事では仕方がない。
彼は会社で契約しているハイヤーを愛実の家に回し、美馬邸まで送らせることにしたのだった。

だが、もし邪魔が入ったら、愛実に何かあったら、と思うと気が気でない。
無事送り届けました、の一報を運転手から受けたのは、藤臣自身が美馬邸に戻る途中のこと。
何事もなくてよかった、と彼は大袈裟なほど胸を撫で下ろした。

そして、すぐに美馬邸に連絡をして、愛実には玄関フロアで待つよう言付けを頼む。
ところが、藤臣が帰り着いたとき、愛実はすでにパーティフロアに向かった後で……。


「あら、藤臣さん。まったく、あなたって人はお金のためならなんでもやるのね。こんな女子高生とまで結託して……。母親の血かしらね」


加奈子は表向き叔母にあたるが、実際は腹違いの姉だ。
藤臣にはそういった姉が三人いることになる。そんな中で弥生と手を組み、彼を追い出すための急先鋒となっていたのが、この加奈子……正確には加奈子一家だった。

藤臣は愛実の肩を抱き、彼女を後ろに下がらせた。

加奈子との間に割り込むように、自分の身体を滑り込ませる。


「父親も似たようなものですからね。この美馬家に引き取られて感謝していますよ。加奈子さん」


加奈子は当然、藤臣が異母弟であることを知っている。
一志のことを指した嫌みに、加奈子の頬は小さく痙攣した。

彼女は父親の財産分与を当てにしていたが、そのほとんどを藤臣に奪われ腹に据えかねているはずだ。
だが、それをおおやけにしたり、遺留分を求める裁判を起こしたりすれば、一家揃ってこの邸と会社から追われる羽目になる。

今回、弥生が巻き起こした騒動で、最も信一郎の尻を叩いていたのがこの加奈子だ。

それも、ある男を協力者として……。

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