十八歳の花嫁

第4話 記憶

第4話 記憶





藤臣の手が腰に触れた瞬間、愛実の頭は真っ白になった。

手の熱さも、力強さも……さっき肩を抱かれたときとは比べ物にならない。愛実は、そのままキスされるのかと思ったほどだ。


「……すまない」


藤臣はフロアの隅に置かれたソファまで愛実を連れて来て座らせた。
そして、水のグラスを差し出しながら謝罪を口にする。


「あの、さっき暁さんがおっしゃってた――病院送りって、信一郎さんのことですか? 暁さんは何か知ってらっしゃるんですか?」


愛実の心に不安が押し寄せ、藤臣に質問したが、彼はスッと目を伏せた。


「さあ、どうかな。だが心配は要らない。君には私がいる。それに暁さんは……邸の中で流れている噂を聞いたのかもしれないな」

「どんな噂ですか?」


愛実の質問に顔を上げる。
そこには悪戯めいた笑みが浮かんでいた。


「君を口説こうとした信一郎を、私が襲って病院送りにしたそうだ。その上で、君をホテルに監禁して自分のものにした」

「そ、そんなっ! あんまりです。否定されたんでしょう?」

「なぜだ? 美馬藤臣という男は、欲しいものを得るためなら手段は厭わない。横から奪おうとしたら、信一郎と同じ目に遭う。――となれば、全治三ヶ月の重傷を負ってまで、女性を手に入れようとする男は少ないだろうな。君は安全だ」


あっさりと言いきる藤臣に、愛実は言葉もなく見惚れていた。

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