十八歳の花嫁
第8話 密会
第8話 密会
直後、化粧室の扉が開く音がした。
藤臣は咄嗟に、愛実を抱きしめたまま個室に入り込む。
個室のドアはかなりしっかりした作りで、ノブを回して開ける外開きだ。カチリとドアを閉めると、鍵をかけずふたりは息を詰めて様子を見守った。
「あ、あの……どうして、隠れるんですか?」
愛実は空気を震わすような声で藤臣に尋ねた。
「いや、すまない。つい」
確かに、ふたりは隠れる必要などない。
誰に見られたとしても『ふたりきりになりたいのはわかるが、今日の主役だろう?』とからかわれるのが関の山だ。
だが、藤臣はもうしばらくこのままでいたかった。
愛実を取り巻く環境は厳しいものがある。
誰かが彼女を守らなければならない。ならば、美馬家の騒動に巻き込んでしまった責任は、藤臣が取るべきだ。
彼はそんな風に思い始めていた。
問題はその責任の取り方だった。
愛実が望むなら、あえて結婚に期限はいらないのではないか、と。
自分はどうせ、まともな恋愛感情など持てない人間だ。セックスさえできれば、女なら誰でも同じである。
だったら、それが愛実であっても問題はないだろう。
最初の予定どおり、“偽りの”愛の言葉をささやき、ごく普通の結婚にしてしまえばいい。
愚かな藤臣は、その考えがさも正論のように思えてきて、彼はゴクリと唾を飲んだ。
「もし……人が入って来たら」
愛実は潤んだ瞳で不安そうに彼を見上げる。
「あれは男の靴音だ。こっちには来ないさ」
声にできない言葉で伝え合うため、ギリギリまで顔を寄せ合う。
愛実の吐息を感じた瞬間、柔らかい唇が耳元を掠めた。
(この結婚が本物になれば、愛実のすべてを俺のものにできる!)
邪な思いが藤臣の中を駆け巡った。
直後、化粧室の扉が開く音がした。
藤臣は咄嗟に、愛実を抱きしめたまま個室に入り込む。
個室のドアはかなりしっかりした作りで、ノブを回して開ける外開きだ。カチリとドアを閉めると、鍵をかけずふたりは息を詰めて様子を見守った。
「あ、あの……どうして、隠れるんですか?」
愛実は空気を震わすような声で藤臣に尋ねた。
「いや、すまない。つい」
確かに、ふたりは隠れる必要などない。
誰に見られたとしても『ふたりきりになりたいのはわかるが、今日の主役だろう?』とからかわれるのが関の山だ。
だが、藤臣はもうしばらくこのままでいたかった。
愛実を取り巻く環境は厳しいものがある。
誰かが彼女を守らなければならない。ならば、美馬家の騒動に巻き込んでしまった責任は、藤臣が取るべきだ。
彼はそんな風に思い始めていた。
問題はその責任の取り方だった。
愛実が望むなら、あえて結婚に期限はいらないのではないか、と。
自分はどうせ、まともな恋愛感情など持てない人間だ。セックスさえできれば、女なら誰でも同じである。
だったら、それが愛実であっても問題はないだろう。
最初の予定どおり、“偽りの”愛の言葉をささやき、ごく普通の結婚にしてしまえばいい。
愚かな藤臣は、その考えがさも正論のように思えてきて、彼はゴクリと唾を飲んだ。
「もし……人が入って来たら」
愛実は潤んだ瞳で不安そうに彼を見上げる。
「あれは男の靴音だ。こっちには来ないさ」
声にできない言葉で伝え合うため、ギリギリまで顔を寄せ合う。
愛実の吐息を感じた瞬間、柔らかい唇が耳元を掠めた。
(この結婚が本物になれば、愛実のすべてを俺のものにできる!)
邪な思いが藤臣の中を駆け巡った。