十八歳の花嫁
瞬間、彼は目を開け、愛実を見た。
濁りのない黒い瞳に囚われ――藤臣の中から“理性”の文字が消失した。
吸い込まれるように、艶めく唇を奪う。
そこは固く閉ざされ、簡単に男の侵入を許そうとはしない。
だが、それすらも彼には新鮮で衝撃だった。
やがて、愛実は苦しそうに身を捩り……開いた口元から、藤臣は舌を差し込んだ。
愛実は驚いたように硬直し、痛いほど藤臣の腕を握る。
(よせ……もう、やめろ……早く離れるんだ)
頭の中では警報が鳴り響いている。
それとは逆に、左手を愛実の背中に回し、右手で腰を支えた。
思わず、力いっぱい抱き寄せてしまう。
そして、愛実の手が彼の背中に回った瞬間――それだけで達してしまいそうになった。
(理性も分別も知ったことか! 愛実を俺のものにして、それから考えればいい!)
藤臣はドアに背を付け、寄りかかるように愛実を抱きしめキスを続け……。
刹那――彼の背中から圧迫感が消え、身体がふわっと宙に浮く。
唐突にドアが開き、彼は地球に重力があることを再認識した瞬間だった。