十八歳の花嫁

第7話 再会

第7話 再会





最寄りの駅に電車が滑り込む。愛実は重い足取りでアパートに向かった。

美馬と言った……あの男は何を考えているのだろう?
彼のおかげで、警察に連れて行かれずに済んだことは確かだ。そのことはもちろん感謝している。だが、初めから愛実の素性を知っていたなんて。そうなると、話は別ではないか。

馬鹿な女子高生にすぎない愛実でも、美馬グループの名前くらいは聞いたことがある。
たった今、彼女が乗って帰って来た東部鉄道の親会社だったはずだ。彼自身は東部デパートの社長と言っていた。
最近では行くこともないが、以前はよく利用していたデパートのひとつだった。

彼の祖母と愛実の祖父の関係は、気にならないと言えば嘘になる。
十八歳の少女らしく、胸の中では切ない恋物語を思い描いていた。愛実が小学生のころに亡くなった祖父は、いったいどんな約束をしたのだろう。

今とは違う状況で、違う場所で、美馬と出会いたかった。
もしそうなら、せめて彼の祖母に会い、事情くらいは聞いたであろう。その上で、美馬と恋を始められたなら……。


――金が必要なんだろう? 君の時間を買おう。いくらだ?


侮蔑に満ちた美馬の声を思い出し、愛実は軽く頭を振る。“もし”はないのだ。
と、同時に……愛実はふと、無造作に置かれた五十万円を思い出す。
あのお金があったなら……。


「おうおう、やっと帰ってきたな、お譲ちゃん」


金融業者とは名ばかりの、どう見てもヤクザに思える男たちが三人、アパートの前で彼女を待ち構えていた。

途端に、ハッと我に返る。
そうだ、この男たちに支払うために、自分は身体を売ろうとしたのだ、と。


「で、金はできたんだろうな」


男のひとりが凄み、愛実に顔を近づけて来た。


「それは……あの、明日は必ず……」

「馬鹿にすんじゃねえぞ、コノアマ! 明日まで待ってくれって言うから待ってやったんだろうが!」


深夜にも関わらず、男は罵声を張り上げる。


「どうか、あと一日だけ待ってください。お願いします」


愛実はビクビクしながらも懸命に頭を下げた。
すると、三人の中で一番若い男が肩をいからせながら彼女の前に立ち、


「きっちり八十万、耳を揃えて返してくれるんだろうなぁ。ああっ!」

「は、八十……そんな! 二ヶ月前に母が借りたのは二十万円で」

「利息があるんだよ! そんだけ払っても、あんたの母親は貸してくれって言ったんだ!」


その言葉に愛実は眩暈を感じた。

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