十八歳の花嫁

「化粧室の前に大きな使用中の札を用意すべきだな。すまなかったね、愛実さん」

「い……いえ」


あまりの出来事にショックを受けたのか、愛実は藤臣の上で固まっていた。


「抱き合っていたいのはわかるが……立てないなら手を貸そうか?」


ふたりがいつまでも立ち上がらないので、暁がそんなことを口にした。


「あ! すみません。わたしが上に乗ってしまって……重かったでしょう? 本当にごめんなさい」

「いや……」


――もっと抱いていたかった。

さすがに、暁の前でそれを口にすることは躊躇われた。
愛実を立たせながら、藤臣もゆっくり立ち上がる。


「謝ることはないさ。可愛いフィアンセに上に乗られて、喜ばない男はいないよ。だろ? 藤臣くん」


(余計なことは言わずにさっさと出て行ってくれ)


その言葉を飲み込むと、


「それは、ともかく。暁さん、不倫は不味いですよ」


藤臣は矛先を暁の方に向けた。
少しはバツの悪そうな顔をするかと思いきや、


「ああ、そうなんだ。朋美とは離れがたくてね」


実にアッサリしていて、悪びれる様子もない。
言い逃れはできないまでも普通は言い訳くらいするだろう、と藤臣は思う。


「じゃあ、ずっとですか? だったらさっさと朋美にも離婚させて、一緒になればいいでしょう? もう、旦那様はいないんですから」

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