十八歳の花嫁
朋美と暁の仲を裂いたのは一志だ。
一志は突然、暁をNYにやった。表向きは栄転だが、理由は朋美の婚約が成立したので、結婚式が終わるまで彼を国外に出したのである。
だが、そんな暁を追おうと朋美が家を出てしまう。
彼女は暁の子供を妊娠していたのだ。そこを水際で連れ戻し、子供を処分させ安西家に嫁がせた。
当時、一志は安西家が所有する土地を欲しがっていて、そのための布石というが……。
暁が日本に戻って来たとき、彼には重役の娘との挙式が決められていた。
これは藤臣の予想だが、暁が渡米する際、一志は美味しい言葉で彼を騙したのではなかろうか?
帰国後の暁の荒れ様は尋常ではなかった。
一志が死ぬなり、離婚したと言うことは……やはり、重苦しい事情があったとしか思えない。
藤臣が一志のことを口にすると、一瞬、暁の顔が曇った。
「ま、追々ね。だが、こういうセックスもスリルがあって楽しいんだ。君らもそうだったろう?」
暁は都合が悪くなると、再び話をこちらに振る。
それを言われると……藤臣の中にたった今聞かされた生々しい声が浮かび上がり、落ちつき始めた情熱の熾火(おきび)が燻り始める。
だが、それは藤臣だけではなかった。
「おっと、愛実さんもおとなしく見えて、スリルを好むタイプかな?」
暁の言葉に彼女を見ると、頬を染めてうつむいている。
「愛実で妙な妄想はしないでくれ!」
彼女に向ける暁の視線が気になり、藤臣は叫んでいた。
「夢の中で彼女を脱がしてセックスしたら……君まで出てきてボコボコにされそうだな」
暁は笑いながら言う。
「ええ、そうですね。夢ではなく現実で」
「信一郎くんのように?」
「返事が必要ですか?」
「いや――これ以上はやめておこう。可愛い彼女の前だ」
笑顔の消えた藤臣から、暁は顔を逸らせた。
「先に行きます。――愛実」
ごく自然に愛実の手を握り、暁を残して二階の化粧室を出て行くのだった。