十八歳の花嫁
☆ ☆ ☆
(俺は頭がおかしくなったのか?)
階段の下で立ち止まり、恥ずかしそうにうつむく愛実を見た瞬間――。
藤臣は彼女を抱き上げ三階の私室に駆け上がり、ベッドに押し倒そうかと真剣に考えていた。
化粧室前の壁にもたれかかり、腕を組んでなるべく冷静になろうと努力する。
幸いと言うべきか、暁の不意打ちで下半身は落ちつきを取り戻していた。
だが、この調子ではどこまで持つかわかったものではない。
愛実の口から藤臣への思いを聞き、予想が当たっていたことに彼の中のストッパーが外れた。
堰を切ったように感情の波が押し寄せ、気づいたときには奪うように口づけていた。
(なんという様だ。約束も誓いもあったもんじゃない!)
藤臣は髪の中に手を入れ、掻き毟るようにする。
そのとき、空いた皿を抱えパーティフロアから出て来た年配のメイドが彼の前で立ち止まった。
メイドは藤臣の顔を物珍しそうに見ている。
直後、ハッとした顔をして「失礼しました」と厨房の方に足早に消えて行く。
今度は逆だ。
厨房から戻って来た別のメイドが、またまた藤臣の顔を凝視する。
「どうしたんだ? 私の顔に何か付いているのか?」
きつめの口調で問いかけると、そのメイドも「いえっ! 申し訳ありません」叫ぶように言い、走り去った。
(何なんだ!? 俺が何をしたって言うんだ!)
そのとき、義父の弘明と執事の糸井が何事か話しながら藤臣の前を通りかかった。