十八歳の花嫁
当の暁に否定してもらおうとフロアを見回すが、彼の姿はどこにもない。
だが、朋美は加奈子のすぐ後ろに立っていた。彼女の表情は凍りつき、愛実と視線が合った途端、顔を逸らせた。
余計な口を出して、喘ぎ声の張本人が自分であると暴露されるのが怖いのかもしれない。
「愛実様、答えていただけませんか? 大奥様はとても厳しい方ですのに、このことはご存知なんでしょうか? 私どもにすれば、とても若奥様なんて呼べませんわ」
愛実は迷っていた。
真実を言えばいい。
だが果たして、暁と朋美の情事をバラしてもよいものだろうか?
加えて、宏志の悪事を明らかにすれば、母親の加奈子はムキになって否定してくるだろう。
それに、藤臣と千里の関係は絶対に口にしたくない。
上手くかわす言葉が見つからず、愛実は無言で唇を噛み締める。
「答えられないという事は、お認めになるんですね?」
千里は勝ち誇ったような顔になる。
「まぁそうなの? あなた、親族を集めた顔見せの席なのよ。それを、なんてふしだらな……」
加奈子が大仰な仕草で愛実を糾弾しようとしたとき――。
「私が強引に引っ張り込んだんです。婚約したんですから、少しは大目に見てもらえませんか? 伯母上」
そう言って姿を見せたのは藤臣だった。