十八歳の花嫁

「随分、酒臭いな」


ドアが開くなり、藤臣は我が物顔で部屋に入って行く。

久美子は慌ててスリッパを差し出した。


「眠れなくて……少し飲んでたの」


濡れた髪をかき上げながら、久美子は答えた。

1LDKで特に変わった間取りでもない。案内の必要もなく、藤臣はつかつかと奥の部屋に入って行った。
彼は上着のボタンだけ外して、カウチソファに座り込む。

その瞬間、室内の空気がふわっと広がり、さっき嗅いだばかりのコロンの匂いが彼の鼻腔をくすぐった。


(まあ、こんなもんだな……)


片笑みを浮かべ、藤臣は尋ねる。


「オートロックを開けるのに、あんなに時間がかかるものなのか?」

「シャワーを浴びてたのよ。あなたが来るって言うから」


甘い声で言いながら、久美子はナイトガウンを脱ぎ捨てた。
彼女は黒いシースルーのベビードールを着ている。ショーツも黒のTバックで、生地は必要最小限といったものだ。


「ねーえ、藤臣さん、どうしたの? 部屋には来ないって言ってたくせにぃ。そんなにあたしが欲しかった?」


久美子は藤臣の隣ではなく、膝の上に乗りかかった。
しなを作りながら、彼女は両腕を藤臣の首に巻きつかせる。

こういう女の仕草に満足していたはずだった……これまでは。

愛実を見るだけで欲情し、頭の中はセックスでいっぱいになる。
まるでやりたい盛りの中学生だ。おまけに下半身の反応も中学生男子と大差ない。

それが、久美子の誘惑には沈黙したままだ。

< 176 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop