十八歳の花嫁
それなら瀬崎だろう。
彼なら、命じられなくても愛実の気持ちを考え、手を回してくれるはずだ。
ここしばらく、瀬崎と話す機会が多くなっている。
理由は簡単だ。藤臣が仕事と言って断るたび、瀬崎が申し訳なさそうに愛実の相手をしてくれる。
彼女が聞かなくても、
『結婚式や新婚旅行の予定を空けるために、懸命に仕事を片付けておいででして……』
そんな風に説明してくれるのだ。
困っていることはないか、欲しいものはないか、と心配してくれるのも瀬崎だった。
その他にも、藤臣の命令だと言って様々なフォローしてくれるが……きっと瀬崎の配慮に違いないと思っている。
そしてこのパーティドレス。
花嫁衣裳を思わせる純白のドレスだった。
丈が膝より少し下で、スカート部分のシフォンが柔らかいピンクでなければ、ウェディングドレスと間違いそうである。
ピンクのショールにローヒールのパンプス。長い髪はピンクのリボンと一緒にふんわりと編み込み、生花で留めた。
美容師はこの髪型も藤臣の指示だというが……。
「子供っぽく見えませんか? 藤臣さんには、余計に不釣合いに思えて」
言った後で、愛実は美容師たちの気分を害したのではないかと気になり始める。
彼女らの仕事ぶりに文句を言うつもりなど更々ない。
愛実が閉口していると、
「まあ、とんでもありませんわ! 髪型もドレスも、よくお似合いでしてよ。お若くて可愛らしいお嬢様の長所が引き出されていて……自然が一番ですわ。美馬様に合わせたファッションは、あと十年してからで充分じゃないかしら」
優しい笑顔で言われ、愛実の顔も綻んだ。