十八歳の花嫁
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『現役の女子高生が社長夫人へ』『東部デパート美馬社長の十八歳の花嫁』
マンションのリビングに数枚のスポーツ紙が散乱していた。
どの見出しにも、藤臣の記事にはそういった謳い文句が書かれている。『旧伯爵家のご令嬢』の文字も多い。
しかも、婚約者の愛実はおどおどした笑顔をカメラに向け、まるで垢抜けない田舎娘のようだ。
そんな小娘の薬指に光っているのは三カラットのダイヤモンドリング。
ティファニーの商品で軽く八桁はする品だと本文に書いてあった。
(散々遊んだ挙げ句、こんな捨て方……許せない。絶対に許さないわ!)
久美子は缶ビールを片手に部屋の中をうろうろした。
そのついでとばかり、床に広げた新聞の愛実の写真を踏みつけにする。
とくに指輪の辺り――このエンゲージリングをもらうのは自分だったのに、という思いが強い。
(――結婚? それも女子高生ですって? 冗談じゃないわ。一生結婚はしないなんて、あたしには言いながら……ぶち壊してやる)
藤臣が久美子を捨てたという噂は瞬く間に広がった。
すると、手の平を返したように多くの人間が久美子の近くから去って行ったのだ。
女優デビューの話も『なかったことに』なんて、あんまりではないか。
所属事務所の社長にすら、東部デパートの契約が切れる来春以降、事務所との更新もなしと言われた。
藤臣のバックアップがなくなった途端、久美子には用なしと言わんばかりだ。
そして、彼女を切ったのは事務所だけではなかった。