十八歳の花嫁
『久美子さん、さぁ……東部の社長さんと別れたんだ』
藤臣が訪ねて来た夜、会っていた男は歌舞伎町のホストだった。その男が、久美子の顔を見るなり言ったのだ。
『だったらさ、うちの店にはもう来れないよね。俺たちも別れようか』
金なら心配はいらない。
藤臣には充分なものをもらっているから、久美子はそう言ったが、男は軽く笑いながら彼女の手を振りほどきいなくなった。
携帯番号も変えられ、店にも要注意客とされて入れなくなったのだ。
(幸せになんかさせるものですか。十八歳の花嫁ですって。こんな、なんの苦労も知らない小娘が社長夫人だなんて。こんな子供に負けるなんて、絶対に許さないんだから)
久美子は双眸に憎しみの炎を灯し、写真の愛実を睨んだ。
スポーツ紙を拾い上げ、ビリビリに破り捨てる。そして、肩で息をしながら……ニヤリと笑ったのだ。
彼女が時間稼ぎのように逃げ回っていたのには、もちろん理由があってのこと。
(美馬藤臣はあたしのものよ。必ず妻になってみせるわ!)
久美子は不敵な笑みを浮かべながら……そっと下腹部に手を添えた。