十八歳の花嫁
モデルだけあって久美子の身長は見上げるほど高い。
多分、藤臣の愛人だと言ったメイドの千里より高いだろう。ハイヒールを履いているので尚更そう感じる。スレンダーで顔の小さい綺麗な女性だった。
――関係のある女性とは結婚までにすべて手を切る。
藤臣はそう言った。
それには、この久美子も入っているはずだ。『どうなってるの?』と聞いたことは一度もないが、約束を破るような人じゃないと愛実は信じている。
彼女は肩より少し長い髪を明るい茶色に染め、緩く内巻きにして垂らしていた。
ドレスは身体の線がくっきりと浮き出るマーメイドライン。シンプルなデザインがスタイルのよさを際立たせている。
しかし……そのドレスに周囲の招待客は口をあんぐりと開けたままだ。
それもそのはず、彼女はなんと純白のドレスを身に纏っていたのである。
まるでウエディングドレスのようだ、と愛実は……いや、誰もが思ったことだろう。
「お待たせしてごめんなさいね、藤臣さん。あなたが教えてくださるのが遅いから、ドレスを用意するのに時間がかかってしまったの」
久美子は髪を手で払いながら、藤臣に向かって話しかけた。
「……ああ、あなたはもういいわよ。下がって頂戴。身代わりご苦労様」
藤臣の左側に立つ愛実には一瞥もくれず、追い払うように手をひらひらさせた。
久美子は彼の右肘辺りに腕を絡ませ、そのまま身体をピッタリと寄せる。
「さあ、行きましょうか」
彼女は藤臣に向かって艶然と微笑み、促したのだった。
愛実は言葉もなく驚いていた。
チラッと由佳に視線を向けると、こういうオンナよ、と言わんばかりに彼女は目で合図した。
愛実は何とも言えない顔を由佳に返す。
(わたしは……どうすればいいの?)
そう思った瞬間、藤臣は久美子の指に自分の手を重ねた――。