十八歳の花嫁
「失礼、長瀬くん。これまでは、東部デパートのイメージモデルである君にパーティでの同伴をお願いして来たが……」
一気にその指を引き剥がすと、彼は愛実に手を差し伸べた。
「私の婚約者で西園寺愛実さんだ。これからは彼女が傍にいてくれるんでね。もう妻の代わりは必要なくなった。君は下がってくれて構わない。パーティを楽しんでくれ」
間違いようもない言葉で久美子は拒絶され、瞬時に青褪める。
周囲も事情はわかっているのだろう。捨てられた愛人の姿から目を背けながら、失笑が広がった。
愛実はどうにも居た堪れない。
とはいえ、愛実から声をかけられるのは久美子にとって更なる侮辱だろう。
藤臣に手を引かれるまま、その場から立ち去ろうとした。
「何を言うの、藤臣さん! あなたはあたしと結婚するのよ。世間の人もそう思っているわ。それに、あたしを捨てるわけにはいかないんだからっ!」
背後で久美子が叫ぶ。
同時に、藤臣の口元から舌打ちが聞こえた。
彼は目で瀬崎を呼びつけ、
「長瀬くんは私に話があるようだ。別室に案内してくれ」
短く小さい声で命じた。
瀬崎も心得たとばかりにうなずき、部下たちに指示して久美子を取り囲んだ。そのまま、会場の外に連れ出そうとする。
だがそのとき――。
「触らないで! 乱暴にしてお腹の子供に何かあったらどうするの? あたしは美馬社長の子供を妊娠してるんだからっ!」
久美子の甲高い声に、辺りは一瞬でざわめいた。