十八歳の花嫁
「妊娠は事実か?」
唐突に核心をついた質問をされ、久美子は飛びつくように答える。
「もちろんよ! 嘘なんてつくはずないわ!」
「診断書か妊娠証明書を出せ」
「まさか、診断書を取り上げるつもりなの?」
「……そんなことになんの意味があるんだ。さっさと見せろ」
久美子はバッグから診断書を取り出しおずおずと差し出した。
「まだ七週目だから妊娠証明書はもらえなかったの。ねえ、これも見て。エコー写真よ。ちゃんと心臓も動いてるのよ」
藤臣は診断書を手に取り、ざっと目を通した後、産婦人科に確認を取るよう瀬崎に命じた。
(いくらでも調べるといいわ。本当のことなんだもの)
久美子は胸の内で笑いながら、煙草の煙に顔を顰め手で払った。
すると、藤臣が煙草の火を消したのだ。
これまでの藤臣からは考えられない行動だった。
久美子がある人から聞いたとおりである。この男は女には冷たいが、子供に対しては異常なほどの責任感を見せる。そう、十年前も……。
「あたし、本当は子供が欲しかったの。こうなって驚いたけど、でも大切に育てるわ。お願い……産んでいいって言って」
久美子はありったけの母性を総動員して、藤臣に泣きつく。
彼は深く息を吐きながらひと言、「……仕方ないな」そう答えたのだった。