十八歳の花嫁
藤臣はこれまで、久美子の男関係に興味のある素振りなどしたことがなかった。
彼女にすれば、上手く騙していると思い込んでいたに違いない。
だが、女には散々痛い目に遭わされてきた藤臣である。
例のホストは久美子に対して特別な感情など全く抱いてはいなかった。
藤臣の情報源がそのホスト自身だとは、久美子は夢にも思うまい。
「こちらの条件を言おう。今すぐ、君の妊娠と私は無関係だという書類にサインするんだ。なら、君のことは訴えない。だが、あくまで私の子供だと言い張るなら裁判になる。もちろん中絶は強制しない。鑑定の結果、私の子だと証明されたら子供は認知して引き取る。君には相応の慰謝料を支払おう。だがもし私の子でなかった場合――君には名誉毀損の慰謝料と、多大な損害賠償を請求する」
藤臣の表情は非情なまでの冷酷さを映していた。
ついさっき、愛実の前で見せた穏やかな笑顔とは百八十度違っている。同一人物とは思えないほどだった。
「生まれて……あなたの子だったら……あたしが育てるわ。そのときは結婚して一緒に……」
語るに落ちるとはこのことだ。
久美子は藤臣の子供でない可能性を口にした。
だが――
「ふざけるなっ!」
彼は身を乗り出し、テーブルを思い切り叩いた。