十八歳の花嫁
その威嚇めいた行為に久美子は震え上がる。
「金のために子供を産むような女に、俺の子供を渡して堪るか! どんなことをしても取り上げてみせる!」
愛もなく、妻にもなれないと承知で、藤臣の母は彼を産んだ。
それが金以外のなんのためだろう。
叶うなら三十年前に戻り、生まれ落ちたばかりの自分の首をこの手で絞めたいくらいだ。なんにも知らず、なんの罪も犯さないうちに殺して欲しかったと何度願ったことか。
子供など欲しくない。
美馬の血が流れた子供など、悪魔を増やすようなものである。
「いいか? マスコミの目を引く広告塔だと思うからこそ、好きにさせてやったんだ。だが、結婚の邪魔だけはさせん! 俺の子供だと自信があるなら産めばいい。違ったときは……貴様の人生は終わりだ」
藤臣は冷酷だが短気でも粗野でもない。
そんな男が感情を剥き出しにして怒り狂う姿に、久美子は完全に気圧されていた。
「わ、わかったわ……悪かったわ。ごめんなさい……子供は堕ろすから。あなたの結婚の邪魔はしない。だから、コレまでどおり……」
「認めたな。告訴は勘弁してやる。イメージモデルは本日付で解約。マンションは今月中に出て行け。以上だ」
「待って! 契約は来年の三月まであったはずじゃ……」
「婚約披露パーティをぶち壊し、満座の席で私に恥を掻かせて何が契約だ。貴様にもう広告塔に価値はない。自分のやったことの愚かさを知るといい。シンデレラの時間は終わりだ」
藤臣は吐き捨てるように言うと席を立った。