十八歳の花嫁
愛実に言われるままパーティ会場から離れたが……。
今頃彼女は婚約者の不品行を理由に、謂れのない非難の的になっているかもしれない。
(――傍にいると約束したのに)
考え始めれば愛実のことばかり気にかかった。
出て行く藤臣の背に縋り、久美子は懸命に甘えた声を出す。
「あたしの身体は? よかったでしょう? あんなに気に入ってくれたじゃない。充分に楽しんだはずだわ」
土壇場で口にできるのはセックス以外にはないらしい。
藤臣は鼻で笑うと、
「汚い手で触らないでくれ。君の身体で楽しんだことは一度もない。誰でもよかった。その程度だ」
一瞥もくれず、久美子を振り払った。
「このクソ野郎! あんたみたいな男、死ねばいいんだ! 地獄に堕ちやがれっ!」
背後で喚く久美子の声がしだいに聞こえなくなる。
「瀬崎……」
「マスコミは押さえました。会場の方は健気にも愛実様がひとりで応対しておられます。大奥様がすでに引き上げられていて幸運でした。それと、彼女が子供をどうするか……見届けます」
「――すまん」
さすがの彼も、これ以外の言葉は出ない。
「珍しいですね。ですが、謝る相手が違います」
瀬崎はニコリともせずに答えた。