十八歳の花嫁
☆ ☆ ☆
すべての計画は変更だ。
愛実を表面上ではなく、事実上の妻にする。
どんな手段を使っても、彼女を自分の許に留めておきたい。必要なら、“愛”という言葉を利用してでも。
自分の中に“愛”などという崇高な感情は残っていない。
十代前半でセックスを覚え、情欲にまみれて生きてきた。男としての自分は骨の髄まで腐りきっている。
だが人として……わずかに残った分別が、自分から愛実を遠ざけようと努力してきた、はずだった。
(ダメだ……もうダメだ。愛実が欲しい。たとえ傷つけることになったとしても……)
藤臣は必死に考えた。
何も初めから傷つける必要はない。
女性の機嫌を取ったり、顔色を窺ったりしたことはないが、愛実をすんなり手に入れるためなら、それも仕方がない。
ふたりきりになったら確実に責められる。
まず、機先を制して謝ろう。
藤臣は謝罪の言葉だけを何度も頭の中で繰り返し、ロイヤルスイートまで歩いて来たのだった。
「赤ちゃん……本当にいらっしゃるんですか?」
愛実の声は震えている。
一方、藤臣は可能な限りの冷静さを装い答えた。
「彼女が妊娠しているか、ということなら、事実だ。診断書とエコー写真を持っていたし、彼女が受診した産科医の確認も取れた」
「それは……藤臣さんの?」
咄嗟に、『違う!』と叫びたかった。
だが――藤臣さんは不実な方ではありません。
彼女はそう言ってくれたのだ。
久美子との交際が明らかである以上、ここで否定すれば純粋な愛実の目に“不実”だと映りかねない。
彼は慎重に言葉を選ぶ。