十八歳の花嫁
「正直に言おう。可能性はある」
瞬く間に愛実の瞳が翳った。
それを見せまいと彼女はうつむき唇を噛み締める。
藤臣は内心舌打ちしながら、慌てて言葉を付け足す。
「待ってくれ。だが、極めて低い可能性なんだ。第一彼女には、私以外にかなり親しい関係の男性がいる」
そう言うと、さっき久美子に見せた写真を大理石のテーブルに置いた。
それも久美子のときとは打って変わって、一枚ずつ丁寧に並べる。愛実にショックを与えそうな、卑猥なショットはすべて抜いてあった。
「歌舞伎町のホストクラブの男だ。週に五日はこの男を部屋に泊めていることがわかった」
愛実は困惑した様子で写真をみつめている。
「で、も……藤臣さんの子供だって言ったのに。それは彼女の嘘なんですか? それとも……何かの検査をして……」
「君に、あまり聞かせたい話じゃないんだが。私は似たようなケースで二度ほど痛い目に遭っている。一度目は不可抗力、二度目は子供に執着したせいだ。そのせいで、こういったことは慎重にしてきた」
愛実にどこまで話せばいいのだろう?
やれピルだコンドームだと話しても、面食らうに決まっている。
しかも、誘惑されてコンドームなしで挿入してしまった。だが、彼女の体内で射精はしていないので妊娠の可能性は低い、など。
(……そんなこと、言えるものか)
「交際相手の女性にも充分注意してもらって、もちろん、私自身も注意は怠らない。ただ、一度だけ不注意に関係した記憶がある。気づいてすぐにやめたが……」
「あ、あの……?」
直接的な言い回しを避け、藤臣はセックスを想像しづらい言葉を選んだ。
そのため、注意だ不注意だと言われても、愛実にすれば禅問答に聞こえるだろう。
「ああ、その……どう言ったらいいのか。要するに、子供の父親は生まれてから正式に鑑定しなければ、おそらく彼女にもわからない、と言うことなんだ」