十八歳の花嫁
尚樹は、美馬がどういう人間なのか、姉の身体目当てではないのか、とかなり気にしている。
彼はソファに腰かけると、スーツの内ポケットから煙草を取り出して火を点けた。
「私の提案が気に入らないなら、あの連中を呼び戻してやってもいいんだ。私が手を引いたと言えば、喜んで飛んでくるだろうな」
長い脚を組み、背もたれに腕をかけて、片笑みを浮かべて愛実を見ている。
「あなたがそうする、とおっしゃるなら……仕方ありません。あの人たちにも、ちゃんと働いて返すつもりでしたから」
「連中の言ってた“フロ”でか?」
「それが……お金になるなら」
「金にはなるだろうな。ただ、奴らに相当な上前を撥ねられて、手元に残るのはどれほどかな? まあ、OLよりは多いだろうが。しかし、それくらいなら私の妻になる方がよほど楽じゃないか?」
実のところ、愛実には“フロ”の意味がわからなかった。
売春に似た行為ということは想像できる。ただ、一週間から十日も我慢すれば家に帰れると考えていた。
愛実は、今さら「知らない」とは言えず……。
「結婚は愛し合ってするものです。そんな、神の前で嘘はつけません!」
「君は……将来愛し合って結婚する気なのか?」
「いつかは、そうできたら」
うつむきながら、小さな声で愛実は答えた。
すると、弾かれたように美馬が笑い始めたのだ。
「何がおかしいんですか?」
「まったく、笑わせてくれる。――二十代の稼げるうちは、ソープから抜け出すことは不可能だろうな。膨れ上がった借金の返済に、君は毎晩何人もの男に脚を開き、あらゆる場所で咥え込む羽目になる。君が取り返しのつかない病気になるか、三十を過ぎればようやく解放されるだろう。さて……どこの物好きが、そんな穢れた女を妻にするんだ?」
美馬の卑猥な言葉を聞き、背筋が凍りつく愛実だった。