十八歳の花嫁
「ここまでだな。今夜は……この辺でやめておこう」
「それで、構わないんですか?」
「もちろんだ。はじめから、そのつもりだったんだから……」
心にもない言葉を口にして、いささか恥ずかしい。
だがまさか、ヤル気満々だったが家族写真だけでなく、自分の写真までみつけて臆したとは言えないだろう。
「この写真は? いつの間に私の写真を?」
話を逸らす目的で藤臣は質問をしてみる。
すると、戻って来たのは予想外の答えだった。
「香港に行かれたときの写真です。あの……信一郎さんからいただいて。長瀬さんと一緒に写ってるのはちょっと……でも、藤臣さんだけの写真があったので、つい」
その答えに、藤臣は開いた口が塞がらない。
愛実も腹が据わっていると言うべきか、それとも天真爛漫さの勝利だろうか。
もし藤臣なら、信一郎に関わるものなど処分しただろう。ましてや長瀬の存在を思わせる写真であるなら……。
藤臣がそのことを口にすると、
「でも、藤臣さんが助けに来てくれたから……嫌な思い出だけじゃないです」
はにかみながら、愛実は答える。
彼女は少しクシャクシャになった髪を手ぐしで整えながら、ベッドの上にちょこんと座っている。
頬を薄っすらとピンク色に染め、その姿を見ているだけで再び戦闘態勢に入るのは、悲しい男の性(さが)だろう。
今すぐ立ち上がり部屋から出るべきかどうか、藤臣は真剣に悩んでいたのである。