十八歳の花嫁
彼女の視線をひしひしと感じ、愛実に対する言い訳を考えてなかったことに気が付いた。
「愛実さん、君には幻滅したな。藤臣さんのセックスが素晴らしいのは、多くの女たちから聞いてるさ。だが、まさか君が、そのひとりになるとは思わなかった」
「和威、文句があるのは私に対してだろう? 愛実を巻き込むな!」
「同じことだ。婚約披露の席を外して、二階のトイレでセックスしてたんだって? 今だって僕が通りかからなければ、どこまでヤル気だったんだか。二ヶ月前の君とは別人だな」
和威は愛実を鼻で笑った。
その態度は藤臣にはとても看過できず……力で和威を黙らせるべく、愛実から離れようとした。
だが、そんな藤臣の手を愛実はギュッと掴む。
「和威さん……あなたがおっしゃるとおり、わたしは藤臣さんに出会って変わりました。彼に愛されてると知って、とっても欲張りになったと思います。でも和威さん、あなたも二ヶ月前とは別人です。初めてお会いしたとき、宏志さんの言葉遣いが我慢ならないとおっしゃってたじゃありませんか!? 今のあなたは、あのときの宏志さんと同じです」
それは藤臣のどんな説教より、和威の胸に堪えたようだ。
和威は愛実から視線を逸らせると、ひと言もなく二階の廊下に走り去る。
「すまない、愛実。和威はどうやら私が思う以上に、君に本気だったらしい。でも冷静になれば……」
「和威さんのことより……。先代の社長さんは、藤臣さんの本当のお父様だったんですか?」
藤臣は即答できず、黙り込んだ。