十八歳の花嫁
藤臣は泣いてはいない。
それが悲しくて、愛実のこめかみに涙が伝う。
言葉にならず、彼女はジッと藤臣の目をみつめ続けた。
すると、彼は愛実の両手首を掴んだまま、覆い被さるようにキスして来たのだ。
熱い吐息が愛実の唇から首筋に下りた。
片方の手が自由になり、同時に制服のリボンがほどかれ……。ボタンがひとつ、ふたつと外され、白いブラジャーが露わになる。
熱い唇は肩紐を外しながら膨らみを辿り、その先端を目指していた。
(藤臣さんは、ここでわたしを抱くの?)
お互いに愛を伝え合い、夫婦となることが決まっている。
きっかけがなんであれ、誰かの思惑があるにせよ、それでも愛し合っているはずだった。
弥生を傷つけるとしても、愛実には藤臣以外の男性は選べない。
可能なら、相続人から外して欲しいくらいだ。
以前なら、そうなれば藤臣から見捨てられると思ったが今は違う。
“藤臣に愛されている”その思いが愛実を強くした。
ギュッと目を閉じ、愛実は彼にされるがままになっていた。
ボタンの三つ目も外され、ブラジャーから白い乳房が弾け出る。そこを藤臣の唇に囚われ、愛実の全身に電流が走った。
「あっ……やぁ……っ」
ふたりの息遣いだけが広がる部屋に、その声は予想外に響いて……。
次の瞬間、藤臣は飛び退くように愛実から離れたのだ。
「す、まない。少し、頭を冷やしてくる」
口元を押さえ、喘ぐように言うと彼は部屋から出て行ってしまう。
愛実の身体から藤臣の熱が消え、彼女は身震いした。無防備にはだけた胸元がやけに冷たい。心細さと切なさに、涙が止まらない愛実だった。