十八歳の花嫁
その瞬間、トイレでの出来事が脳裏をよぎったのだ。
「あのっ! 余計なお世話かもしれませんが……ふっ、不倫はよくないと思います!」
「……え?」
「朋美さんです! 愛し合っていらっしゃるなら、ちゃんとなさったほうが……」
暁と朋美の経緯を聞いたのはつい最近だ。
朋美の母・加奈子や、暁の父・弘明までもが知っていて目を瞑っている理由がわかり、愛実は同情した。
美馬一志という男性はなんて罪作りな真似をしたのだろう。
藤臣のことだけでなく、暁にしても気の毒でならない。
朋美には夫や子供がいる。
それをどうするかは他人が口を挟むことではないが……。
「今のままは……誰にとってもよくないんじゃないかと」
すると、暁はフッと醒めたような笑顔で答えた。
「そうだね。でも、歳を取ると面倒になるんだ。今さら……軌道を修正したって」
「今さらって、人生はまだ半分以上あるんですよ!」
愛実が美馬家の人たちに会って思ったことはそれだった。
皆、何かしら諦めている。これもすべて一志の影響なのだとしたら……。
愛実はすっくと立ち上がり、
「わたし、藤臣さんの傍にいます。この先、何があっても一生傍にいるって約束したんです。だから……弥生様が何を考えているとしても、わたしが藤臣さんの傍を離れなければいいことでしょう? 大丈夫です!」
力強く宣言した。
このときの愛実は、
“愛し合うふたりに乗り越えられないものなどない”
そう信じていたのだった。