十八歳の花嫁
愛実はドキドキしながら答える。
「はい、もちろん! お弁当だって作れますよ」
「それは楽しみだ」
キッチンまでは外付けの明かりがきていなかった。
ダイニングとの境にドアがないので光は射し込むが、どこか薄暗く……その気がなくともムードを盛り上げる。
ふたりはどちらからともなく指を絡めるように繋ぎ、寄り添ったままリビングに戻った。
エントランスから繋がる廊下はリビングの中を突き抜けるようになっている。
リビングの向こうに見えたのは裏庭ではなく中庭。
中庭の中央にサンルームのような廊下があり、突き当たりに重厚なオーク材を使った両開きの扉が見えた。
「あの……ここは?」
「夫婦の寝室だ」
愛実の鼓動は速まった。
扉は昔のままだという。あまりに立派で、現在の基準でも安全性に問題がないのでそのまま使ったらしい。
他にもそのまま利用したものがあり……。
扉を押し開け中に入ると、藤臣は内側の壁に付けられたスイッチを押した。
こちらは別電源で、先に仕上げたためすでに電気が通っているという。
煌々とした灯りの下、二十畳くらいの寝室にクイーンサイズの天蓋つきベッドが横たわっていた。
部屋の真ん中辺り、ヘッド部分が壁にピタリと付けられている。
マットやレースのカーテンは新品だが、天蓋部分を含む本体がイタリアから直輸入したアンティークで、六十年前に弥生の父が取り寄せた物だった。
「あの……大きな、ベッドですね」
我ながらなんて陳腐な感想だろう。
「まあね、この方が遠慮せずに愛し合えるだろう?」
ベッドを目にするだけで、愛実の額には薄っすらと汗が浮かんだ。