十八歳の花嫁
愛実の言葉に、藤臣の自制心は脆くも弾け飛んだ。
彼女を抱き上げ、寝室に戻り、メイキングされていないベッドに押し倒す。
新品のマットは安ホテルのような軋んだ音は出さず、ふたり分の体重を容易(たやす)く受け止め、逆にゆりかごのような優しい余韻を残した。
覗き込んだ愛実の瞳は、不安を孕みながらも期待と愛情の色に染まっている。
藤臣は心臓がバクバクと音を立てるのを感じた。
初体験のときですら、これほどの期待と緊張を覚えた記憶はない。
それが……いい歳をした男が手に汗を握り、指先が震えているのだ。
必要以上に我慢をしていたせいだろうか。
それとも、愛実の身体にとんでもなく期待しているのか――。
(落ちつけ! これじゃ挿入まで持たないだろうがっ!)
男の本能――顕著な反応を見せる下半身を鎖でグルグル巻きにして、押さえ込みたい心境だ。
愛実はそんな藤臣をどう思ったのか。
「あの……電気……消さないんですか?」
尋ねたいわけではなく、消して欲しいのだろう、と言うことはすぐにわかった。
他の女であれば、『うるさい』『関係ない』とさっさとコトを進めていただろう。
だが、愛実にそんな冷たい態度は取れない。
嫌われるのも、泣かせるのも嫌だった。
「あ、ああ……電気か。わかった、すぐに消してくる」
滑稽なほど浮かれた声だと自分でも思った。
あたふたとベッドから這い下り、扉近くのスイッチを消す。
すると、一瞬で室内は真っ暗になった。
ベッドの両サイドには、ベッドと同じくイタリア製アンティークのフロアランプが置かれていたが、コンセントは差し込まれていないらしい。
かろうじて、隣の子供部屋の灯りがドアの隙間から射し込んでいた。
藤臣はそれを頼りにベッドに戻る。
我ながら、何をしているのだろうと笑いが込み上げてきた。