十八歳の花嫁
「あの、藤臣さん? 怒ったの?」
「どうして? 笑ってるんだ。こんな経験は初めてだ。君と同じ、高校生に戻った気分だよ」
愛実は身体を起こしたようだ。
しかし、隣部屋から漏れる程度の灯りじゃ、彼女の表情は見えなかった。
「高校生の藤臣さんに……わたしも会ってみたかった」
艶麗さをかもし出す愛実の声を頼りに、闇の中、藤臣はマットの上に指を這わせた。
すると、すぐに柔らかな指先を見つける。
なめらなか肌を伝い、藤臣の指先は腕から肩へ、首筋、顎と触れながら少し湿った唇まで辿り着く。
「今の私でも、充分に君を満足させられると思うよ」
「ふ、藤臣さん……そういう意味じゃ……」
見つけ出した唇に、吸い寄せられるように口づけた。
愛実もだいぶ、キスに慣れてきたらしい。微かに開き、藤臣の舌を待ち受ける。求められるまま、スルリと中に滑り込み、遠慮がちに差し出された彼女の舌に絡めた。
激しいキスに、首回りを締め付けるネクタイが邪魔だった。
彼はネクタイを緩め、スーツの上着を脱ぎ捨てる。
(ったく。家族の夕食会でネクタイ着用なんて……面倒な)
心のうちで悪態をつきつつ――。
放り投げた上着は、かろうじてベッドの端に引っかかっている。
「あ、あの……藤臣さん? スーツはかけておかないと、シワに……」
愛実は無垢な少女かと思えば、妙なことに気が回る娘だ。
「そんなものは忘れてくれ。今は……俺のことだけ考えるんだ」
キスだけで、藤臣の心も身体も一瞬で押し上げられ、気が狂いそうになる。
ズボンの前が窮屈になり、暴れ馬を押し込めているようだ。
できれば、スカートをたくし上げ、ショーツを引き摺り下ろし、前戯なしでさっさと繋がりたい。
だがそんな真似をすれば、朝の光がこの部屋を満たしたとき、愛実の頬に涙の跡を見ることになるだろう。