十八歳の花嫁

第11話 宣告

第11話 宣告





「……さん。藤臣さん、お口に合いませんか?」


飛び込んできた愛実の声に、藤臣はハッとして顔を上げた。

彼女は心配そうに藤臣の顔を覗き込んでいる。


「いや、すまない。美味しいよ。カレーサンドなんて初めてだ」


例の週刊誌のせいで愛実が学校を休んでいると聞き、藤臣は彼女を昼食に誘った。
謝罪のつもりだったが、彼女はバスケットにサンドイッチ持参でやって来たのだ。


『カレーを作り過ぎてしまって。サンドイッチにすると、また気分が変わって美味しく食べられるから』


結局、コーヒーを入れて東部デパートの社長室でランチを取っている。

愛実は藤臣の『美味しい』の言葉にニコニコ笑いながら、


「カレーうどんも美味しいですよ。今、色んな料理の作り方を尚樹や真美に教えているんです。わたしがいなくなっても大丈夫なように……」

「料理は家政婦がやってくれるだろう? それとも、こちらから回した家政婦に何か問題でも?」


西園寺家には充分な生活費を渡している。
まさか母親ひとりで使い切っていることはあるまいが。藤臣は、いまだに愛実の弟妹が困っているのかと心配になった。

すると、愛実は慌てた様子で、


「い、いえ、問題なんて。婚約が決まって、美馬の家から充分なお金をいただきました。でも、母に任せるのは不安なので……。なるべく尚樹に、と思っているんです。それに、人生なんていつどうなるかわからないから。自分のことは自分でできるように、食事くらいは作れないと」


その言葉に、少なからず藤臣は傷ついていた。

藤臣は頼りにならない、あてにできない、と言われたようだ。
いつもなら、ムッとして言い返すのだが……。今は、後ろめたさが先に立ち、強気に出ることができない。

つくづく、弱さを隠すために吼えていた自分を思い知る。


「その……愛実、週刊誌の記事なんだが……」


サンドイッチをコーヒーで飲み込み、藤臣は口を開いた。

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