十八歳の花嫁
「ご無沙汰しております。こうして対面でお話させていただくのは、採用していただいたとき以来で……」
東恭子は四年前と変わらぬ質素な服装をしていた。
なんの変哲もない白いシャツに、通販で買ったようなベージュのスーツ、くたびれたローヒールのパンプスが目に映る。
化粧もファンデーションと口紅だけのようだ。
度のきつい眼鏡をかけ、緊張した面持ちでホテルの一室にいた。
「挨拶はいい。週刊誌が昔話を掘り返したようだ。そのことで君たち一家に迷惑をかけているなら、相応の対処をしよう。働きづらいようなら、別の職場を用意することも……」
「そうじゃありません!」
思いがけない恭子の叫び声に、藤臣は驚いた。
部屋の隅に立つ瀬崎に視線を向けるが、彼は正面を向いたままで思惑はさとれない。
「わかった。用件を聞こう。だが私はそれほど暇じゃない。さっさと済ませてくれ」
いつにも増して冷ややかな声で言うと、目に見えて恭子は竦みあがった。
彼女は二、三度深呼吸をして、手にしたハンカチをギュッと掴み、ようよう話し始める。
「ずっと、黙っているつもりでした。でも、夫に出て行かれて……。私、あなたが怖かったんです。何を考えているかわからなかったし、石川のことを愛していて、彼と結婚したくて……」
さっぱり要領を得ない話に藤臣は懸命に苛々を抑えていた。
「でも、離婚して困っている私に手を差し伸べてくださって……。私はひょっとしたら、とんでもない間違いをしたのかもしれないと思い始めたんです。どうしようか迷っていて、そうしたら、あなたが結婚すると聞いて……」
次の瞬間、藤臣はため息と共に腰を浮かせた。
「東くん、すまないが要点を言ってくれないか? まだ時間がかかるようなら、話したいことが決まってから」
「絵美はあなたの娘なんです!」