十八歳の花嫁

第3話 忠言

第3話 忠言





夕食が終わり、和威は三階の藤臣の部屋を訪ねた。

彼の不貞は明らかなのに、愛という言葉だけで簡単に許してしまう愛実がわからない。
条件は同じはずなのに。いや、自分のほうが愛実と年齢も近く、誠実に彼女に尽くす自信がある。自分と結婚するほうが、絶対に幸せになれるはずだ。

和威の中で日を追うごとにその思いが強くなった。

そして知ったのが、祖父一志の遺言と藤臣の本当の立場である。

彼は血の繋がらない従兄ではなく、本当の叔父だった。
生きている間は妻に頭の上がらなかった祖父が、死んだ後に一矢を報いた形だろうか。祖父は自分名義の資産ほとんどを藤臣に残していた。

そんな中、この美馬邸だけは弥生に残された唯一の財産だったらしい。

道理で、弥生がどんなことをしても、せめて家屋敷だけでも和威に残そうとするはずだ。
血が繋がらないどころか、夫が愛人に生ませた息子である。自分が生まれ育った家まで渡すのは確かにつらいだろう。

藤臣のためにも、そして愛実のためにも、和威が何も知らないのは不公平だと言い、真実を教えてくれたのは瀬崎だった。

最初はそれを素直に受け入れられず、弥生の元に駆け込み問い質したのだ。
弥生はあっさり認め、逆に、見込み違いだったと和威に冷たい視線を向けた。

そして和威が自滅の道に踏み出したとき、叱り飛ばしてくれたのも瀬崎だ。


『いい加減、目を覚ますべきでしょう。従弟であれ甥であれ、社長が美馬家の中で一番買っているのはあなたです。仮に敵対するにしても、このままでは戦う前に負けを認めるようなものですよ』


だが、瀬崎はなぜ、藤臣が隠そうとしている一志との関係を自分に教えたのだろうか。

和威は疑問を感じ尋ねた。


『社長は和威さんに期待しているものの、まだまだ半人前だと思っておられます。でも、そうではない、と示して欲しいのです。私もそうですが、社長ご自身も、まだまだ人生を達観する年齢ではありませんから……』


瀬崎は寂しそうに笑っていた。

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