十八歳の花嫁
あの弥生が知らぬはずがない。
おそらくは、一家がどん底まで堕ちるのを見届けてから、救いの手を差し伸べるつもりだったのだろう。
売春婦となった愛実に恩を売り、引っ張り上げて自分の好きなように利用する。
弥生であればそれくらい平気でするはずだ。
「確かに、社長の助けが一日遅れていれば、彼女は悲惨な経験をしたことでしょう。その点は、私も社長を見直しました」
瀬崎はホッとしたような表情で美馬に笑顔を向ける。
美馬にとってこの瀬崎は、人生で唯一心を許せる人間だ。
褒められて悪い気はしない。
だが、問題はこの後――
「しかし、よろしいですか、社長」
(……思ったとおりだ。ったく、説教の好きな男だな)
「先ほど聞いた限りでは、彼女のことを思いやった素晴らしい条件です。ですが……本当に手を出さないと約束できるんですか? 何と言っても彼女はまだ未成年です」
「結婚すれば成人扱いだ」
「社長!?」
「勘違いするな、瀬崎。私は彼女を襲うつもりはない。ただ、男と女の間には色々ある。彼女が望めば……俺が断る理由などないだろう? 違うか?」
あの様子なら、一週間も紳士ぶって付き合えば簡単に落ちる。
美馬の中に、それを楽しむ感情も芽生えていた。化粧は全くしておらず、清潔な香りのするきめ細やかな肌の持ち主。
処女など面倒でこれまで触れたこともなかったが……。
だが、結婚するなら話は別だ。
どんな女とのセックスも楽しんだことなど一度もない。
十代後半から二十代前半は性欲に駆られて無茶もしたが、今の美馬にとって、セックスは溜まったものを放出するだけの作業にすぎなかった。