十八歳の花嫁
第4話 恋心
第4話 恋心
『ご覧なさい、和威さん。藤臣さんがとんでもない真似をしてくれました』
そう言って弥生が差し出したのはDNA鑑定の報告書、それのコピーだ。
外国の検査専門会社を使ったのか、全文が英語だった。弥生曰く、弁護士の長倉に命じて東恭子とコンタクトを取らせ、証拠を手に入れたという。
ざっと目を通して、和威は真っ青になる。
『あなた方がどう思っているかはわかりませんが、わたくしは亘さんのお孫さんを救いたかっただけなのですよ。あの時代は身分制度がうるさくて……随分、つらい思いをいたしました。だからこそ、愛実さんの気持ちを汲んで、本来なら許したくはない藤臣さんとの結婚を認めたのです』
そう言われたら、確かに弥生の立場で藤臣を認めるのは苦しかったに違いない。
藤臣から、
『自分で調べろ』
『教えてもらったものは真実とは限らない』
そう言われたばかりだったが……。
素直なのは彼の長所であり、欠点でもあった。
『でもねぇ……和威さん、こういった事実が出てきて、愛実さんはお幸せになれるのかしら?』
和威は弥生に、結婚式まで四日しかない、と答えるが……。
『まだ四日もあるんですよ。和威さん、あなたには後悔しないで欲しいの』
弥生は笑みを湛えて和威をみつめていたのだった。
和威は西園寺邸から追い出されるように出て来た。
何を言っても、愛実は藤臣を信じるの一点張りである。
これでも、丸一日悩んだのだ。
あらゆる情報に通じている暁に相談しようか、とも考えた。しかし、暁が知らなかったときが問題だ。和威は意識せずに、藤臣を追い込む側に回ってしまう。
この場合、瀬崎に尋ねるのが一番だと思うが……。
それこそ、自分ではどうすることもできない、半人前です、と降参するようなものである。
ならば、愛実に直接尋ねよう、と考えたのだ。
愛実が藤臣からすべてを聞いていて、それでも彼を選ぶと言うなら、自分もふたりの味方をしよう。
弥生が藤臣の後見を辞めぬように頼んでもいい。
和威が愛実と結婚したくない、家も継ぎたくないと言えば、さすがの弥生も藤臣に託さずにはいられないだろう。
藤臣は過去のトラウマを乗り越えるため、病的なほど女性に冷たく当たり、セックスだけの関係を築いてきたのだと思う。
逆に、和威は女性と距離を取ることで、心の安定を築いてきた。
そんな和威の一番近くに来た女性、それが愛実だった。
弥生の思惑は明らかだ。だがそのせいで、和威は恋愛の対象として愛実をみつめ、性的関心も芽生えた。
和威にとってそれは、初めての恋だった。
『ご覧なさい、和威さん。藤臣さんがとんでもない真似をしてくれました』
そう言って弥生が差し出したのはDNA鑑定の報告書、それのコピーだ。
外国の検査専門会社を使ったのか、全文が英語だった。弥生曰く、弁護士の長倉に命じて東恭子とコンタクトを取らせ、証拠を手に入れたという。
ざっと目を通して、和威は真っ青になる。
『あなた方がどう思っているかはわかりませんが、わたくしは亘さんのお孫さんを救いたかっただけなのですよ。あの時代は身分制度がうるさくて……随分、つらい思いをいたしました。だからこそ、愛実さんの気持ちを汲んで、本来なら許したくはない藤臣さんとの結婚を認めたのです』
そう言われたら、確かに弥生の立場で藤臣を認めるのは苦しかったに違いない。
藤臣から、
『自分で調べろ』
『教えてもらったものは真実とは限らない』
そう言われたばかりだったが……。
素直なのは彼の長所であり、欠点でもあった。
『でもねぇ……和威さん、こういった事実が出てきて、愛実さんはお幸せになれるのかしら?』
和威は弥生に、結婚式まで四日しかない、と答えるが……。
『まだ四日もあるんですよ。和威さん、あなたには後悔しないで欲しいの』
弥生は笑みを湛えて和威をみつめていたのだった。
和威は西園寺邸から追い出されるように出て来た。
何を言っても、愛実は藤臣を信じるの一点張りである。
これでも、丸一日悩んだのだ。
あらゆる情報に通じている暁に相談しようか、とも考えた。しかし、暁が知らなかったときが問題だ。和威は意識せずに、藤臣を追い込む側に回ってしまう。
この場合、瀬崎に尋ねるのが一番だと思うが……。
それこそ、自分ではどうすることもできない、半人前です、と降参するようなものである。
ならば、愛実に直接尋ねよう、と考えたのだ。
愛実が藤臣からすべてを聞いていて、それでも彼を選ぶと言うなら、自分もふたりの味方をしよう。
弥生が藤臣の後見を辞めぬように頼んでもいい。
和威が愛実と結婚したくない、家も継ぎたくないと言えば、さすがの弥生も藤臣に託さずにはいられないだろう。
藤臣は過去のトラウマを乗り越えるため、病的なほど女性に冷たく当たり、セックスだけの関係を築いてきたのだと思う。
逆に、和威は女性と距離を取ることで、心の安定を築いてきた。
そんな和威の一番近くに来た女性、それが愛実だった。
弥生の思惑は明らかだ。だがそのせいで、和威は恋愛の対象として愛実をみつめ、性的関心も芽生えた。
和威にとってそれは、初めての恋だった。