十八歳の花嫁

愛実は自分の意思で和威を選んだ。


それは決して、弥生の言葉を信じたからではない。
愛だけを理由に、藤臣に選んで欲しかった。

問題は、愛実が藤臣を待てる立場になかったことだろう。

藤臣が悪いわけでも、弥生が強制したからでもなく、西園寺家の抱えた借金のせい。
そして、それを背負うと決めた、愛実自身の責任だった。


「弥生様から聞いた。結婚式は……もう明日なんだぞ。正気か?」

「あの週刊誌に書かれていた十歳の女の子……本当は、藤臣さんの子供なんですよね?」


リビングまで藤臣を通したものの、ふたりは立ったままだった。
愛実はソファを挟んで、真っ直ぐに藤臣を見る。

すると、これまでスッと視線を逸らしていた藤臣も、今回ばかりは小揺るぎもせずにみつめ返した。


「……ああ、そうだ」


その言葉に愛実の肩からフッと力が抜け、泣き笑いのような顔になった。

藤臣はそんな彼女をどう思ったのか、急き込んで話し始める。


「説明させて欲しい。決して君を騙していたわけじゃない。私も知らなかったんだ。本当だ! あの記事が出たとき、マスコミが昔のことを掘り返しただけだと思っていた。それが……どうしてこんな」

「――お子さんのこと、ちゃんと考えてあげてください。わたしには」

「君は許してくれると言ったはずだ! 過去は許す、と。約束してから一度も裏切ってはいないし、裏切るつもりもない!」

「じゃあ……どうするんですか? このままじゃ」

「落ちついた後で金を払う――他に手はないんだ。でも今は認めるわけにはいかない。今、グループ本社の実権を失えば君を守ることができなくなるんだ!」


やはり、藤臣を苦しめているのは自分の存在なのだ。

愛実は唇を噛み締め、顔を上げる。

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