十八歳の花嫁
第7話 別離
第7話 別離
車は藤臣のポルシェではなく、瀬崎の国産車だった。
慣れていないはずの右ハンドルだが、元々運転が好きなせいだろうか、難なくこなしている。
愛実は運転する藤臣の横顔を見るのが好きだった。
窓の縁に肘を置く仕草も、シフトレバーを操作する指先も、助手席に座って見ているだけで愛実の心は浮き立った。
最悪の形で出会いながら、愛実にとって彼は最初から特別な人だと感じていた。
ときには厳しい言葉をぶつけられることはあっても、最後には必ず優しい言葉をくれる。
何度も助けられ、不器用でわかりにくい思いやりと傷つきやすい心を知り……。
ひとりぼっちで生きてきた藤臣の家族になりたいと本気で思っていた。
『そうだ。私が君の父親なんだ』
藤臣の告白は愛実が促したも同然である。
彼は父親だと認めただけで、恭子を愛していると言ったわけでも、愛実への愛を訂正したわけでもない。
だが絵美のために、藤臣は娘の存在をごまかすことはしないだろう。
あの弥生が藤臣の弱点を見つけて見逃すはずがない。
もし、愛実が逆らえばきっと……。
「愛実、夜中に……付き合わせて悪かった」
随分長い時間無言だったが、ようやく藤臣から口火を切った。
「……いえ。大したことがなくて、本当によかったです」
子供たちは母親と同じ病室で一晩過ごすという。
明日には恭子も退院できるそうだ。事後処理に瀬崎が病院に残り、藤臣が愛実を自宅まで送り届けることになった。
車は藤臣のポルシェではなく、瀬崎の国産車だった。
慣れていないはずの右ハンドルだが、元々運転が好きなせいだろうか、難なくこなしている。
愛実は運転する藤臣の横顔を見るのが好きだった。
窓の縁に肘を置く仕草も、シフトレバーを操作する指先も、助手席に座って見ているだけで愛実の心は浮き立った。
最悪の形で出会いながら、愛実にとって彼は最初から特別な人だと感じていた。
ときには厳しい言葉をぶつけられることはあっても、最後には必ず優しい言葉をくれる。
何度も助けられ、不器用でわかりにくい思いやりと傷つきやすい心を知り……。
ひとりぼっちで生きてきた藤臣の家族になりたいと本気で思っていた。
『そうだ。私が君の父親なんだ』
藤臣の告白は愛実が促したも同然である。
彼は父親だと認めただけで、恭子を愛していると言ったわけでも、愛実への愛を訂正したわけでもない。
だが絵美のために、藤臣は娘の存在をごまかすことはしないだろう。
あの弥生が藤臣の弱点を見つけて見逃すはずがない。
もし、愛実が逆らえばきっと……。
「愛実、夜中に……付き合わせて悪かった」
随分長い時間無言だったが、ようやく藤臣から口火を切った。
「……いえ。大したことがなくて、本当によかったです」
子供たちは母親と同じ病室で一晩過ごすという。
明日には恭子も退院できるそうだ。事後処理に瀬崎が病院に残り、藤臣が愛実を自宅まで送り届けることになった。