十八歳の花嫁
責任は取らなければならない。
たとえ十八歳でも、自分自身で決めたことなのだから。
「美馬家の方がどんな方たちであっても、わたしはわたしです。藤臣さんのことが好きだから、これ以上傷ついて欲しくないんです。和威さんはそれでもいい、と言ってくださいました。どうか、わたしを守るために、苦しい決断なんてしないでください」
愛実はバッグから淡いブルーグリーンのリングケースを取り出した。
中に収まっているのは、婚約指輪としてもらった三カラットのオーバルダイヤモンドリングである。
「これをお返しします」
「返されても困る。叩き売っても一千万は下らない。何かのときのために持っておいたほうが無難だ」
そう言うと、藤臣は最初に会ったときのように冷たく笑った。
愛実はふるふると首を振り、そっとコンソールボックスの上にケースを置いた。
「最後のお願い、きいてもらえますか?」
「なんだ」
「最後に、もう一度だけ……キス……して欲しくて」
そんなことを言うつもりはなかったのだ。
でも、気が付けば、愛実は藤臣にキスをねだっていた。
最後の思い出にたった一度だけ……。
しかし、藤臣の答えは――。
「断る。さっきの答えだ“愛してる”の言葉は全部嘘だよ。君を抱きたくて言っただけだ。わかったかい、お嬢ちゃん」
彼はハンドルを抱きかかえるようにして、こちらを見て意地悪く笑った。