十八歳の花嫁

第8話 後悔

第8話 後悔





結婚式前日――


花婿が美馬藤臣から美馬和威に替わったと発表された。
会社をはじめ、式場も大騒ぎとなる。そんな中、和威は自分の気持ちに戸惑っていた。

愛実を愛している。

彼女の心がどこにあっても、藤臣と一緒になるより、自分のほうが幸福にできるはず、だった。


『和威さんのことは好きです。でも、急にこんなことになって……。夫として愛せるようになるまで、色々なことは待っていただきたいのですが。……だめ、ですか?』


彼女がセックスのことを言っているのだ、とすぐにわかった。

愛実に頼まれ、『ノー』と答えられる和威ではない。
ましてや女性に無理強いするなど、和威が最も厭う行為だ。


『待つよ。君が僕を愛してくれるまで。君のために精いっぱい頑張ってみせる。君がいてくれたら、頑張れるような気がするんだ』


そう答えた和威に、愛実は歯を食い縛って微笑んだ。


藤臣が弥生に怒鳴り込んだことは聞いている。
だが藤臣は、まだ和威のもとに来てはいなかった。
すぐに和威を責めにやって来ると思っていたのが、肩すかしで……どうにも気持ちが落ちつかない。


(僕は藤臣さんが怖いのか? それとも……)


朝一番で発表され、和威はその準備に追われた。

親族用のタキシードからフロックコートに衣装を変える。
そして愛実も、『違うウェディングドレスを着たい』と言い出し、周囲を困らせた。
だが、和威はそれを認めたのだ。

決まっていたドレスはデザインから藤臣が指示したものだという。
愛実がそれを着たくない気持ちは痛いほどわかる。

既成のドレスの中でサイズが合うものとなれば限られていたが……。
愛実の『ありがとう』という言葉は和威の胸に刺さった。

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