十八歳の花嫁
自室で考え込む和威の耳に糸井の慌てる声が届いた。
美馬家の執事が声を荒げるなど滅多にないことだ。
「どうしたんだ。いったい……」
和威が廊下に顔を出すと、糸井が必死で止めようとしているのは藤臣だった。
従兄……いや、叔父の姿を見て、和威はゴクリと唾を飲み込む。
「糸井、いい加減にしないか。私が何をすると言うんだ」
「いえ、しかし」
「和威に話があって来ただけだ。和威、中に入れてくれるか?」
藤臣が騒動を起こすと思っているのか、廊下の向こうには興味本位で見ている宏志の姿もあった。
和威は深呼吸してドアを大きく開け、
「どうぞ、藤臣さん。来られると思っていました」
可能な限り余裕の笑みを作り、藤臣を招き入れたのだった。
ソファに座るように勧めるが、藤臣はそれを断る。
「そう長い話じゃない」
「僕のことを怒ってますよね? おばあ様の言いなりで、尻馬に乗って女性を手に入れるなんて……卑怯だと言いたいんでしょう? わかってます、でも」
「落ちつけ、和威。私はおまえを責めにきたわけじゃない」
藤臣は妙に落ちついた様子で和威の肩に手を置いた。